August 31, 2012

ずぶ濡れになる事情もある。

ずっと昔に読んだだけで記憶がおぼろになっているんですけど、向田邦子さんのエッセイに傘の話があったんです。

「胸の手術をして間もない頃で、腕が上に挙げられないんだけど、何かの都合で傘を持って帰っていた。そしたら雨が降ってきて、傘を持っているにもかかわらず腕が挙げられないので傘を差すことができず、ずぶ濡れで歩いてきた。傍からみたら意味不明だろうけど、当の本人には傘を差せない理由があったのだ。」というような内容のお話でした。

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世の中の出来事やニュースについてmixiやtwitterではき出されているコメントを見るとゲンナリすることが多いのは、この傘を差さずに濡れながら歩いている向田さんの事情を想像してみようという態度のかけらもないような意見が多いからなのです。

「傘持ってるのにずぶ濡れなんてバカじゃね?」

たぶん、こんなコメントが並ぶような気がする。

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短く切り取られた事件事故の記事は、短絡的な反応を誘発します。

「警察官が飲酒して暴行事件を起こした。」
>>「たるんでいる!」、「そんなやつはクビだ。」、「なんで酒なんか飲んでるんだ!」

たしかに飲酒して暴行とはいただけない。でも、報道されていることがすべてではないでしょうし。警察官が暴行に及んだ相手はどういう人だったのか。そこに至るまでにどんなやりとりがあったのか。一部始終を見た上でなら「こんな警察官はクビだ!」と言えるかもしれないですが、もしかしたら同情すべき状況があったかもしれない(し、なかったかもしれない)。

その状況が分からない、ただ短いニュースを見ただけで、厳罰に処せだの緊張感が足りないだのっていう、想像力を欠くたくさんの書き込みが、殺伐としたネット空間を作ってしまう。

「政治家の発言が的を射てなかった。」「芸能人が事件に巻き込まれた。」そんなニュースにも、あるいは傷害事件や殺人事件にしても、短いニュースでは報じられないいろんな背景があるのは間違いない。自分が十分には知り得ていない、報道で伝えられる限りの情報でしかない、その後ろにはもしかしたら想像を超える事情があるのかもしれない。

私なら、そんな限界を知った上でニュースにコメントしたいと思うんですけど、そうじゃない人も多いようで。

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傘を持っていながら雨の中をずぶ濡れで歩く人を見て、指さしながら嘲笑するような真似はしたくないし、それは、ネットの上でも同じことだと思うのです。

August 15, 2012

ンゴマクリラの丘。


 6月にマトボ(UNESCO世界遺産)に行った時にガイドしてくれた人が、「ハラレにいるならば是非行ってみるべき。」と言っていたンゴマクリラ(Ngomakurira)の丘に登ってみました。市内からは30km強のところにあります。
 「地球の歩き方」には記述なし、「Lonely Planet」には半ページほど記述がある場所です。途中であったジンバブエ人に聞くと、「ngoma」が「太鼓」、「kurira」が「音」という意味だそうで、「Lonely Planet」も「祝祭のドラムの響きに由来する名前と考えられ、洞穴の中の音響からよく分かるが、特に神聖な洞穴は観光客は入れない。」と書いてます。





 写真のような矢印のペイントを目印に山登り。そもそもハラレの標高が1500m以上あり、丘の頂上は1653m。息が上がります。久しぶりに肩で息をする感覚。


 丘を登る途中には、ところどころに古い時代の人々が残した壁画が残っています。



 写真では分かりづらいのですが、山腹にある洞穴に降りるには、かなり急な岩肌を降りなきゃいけない。「落ちたら死ぬでしょう」という場所で、高所恐怖症の人は行くのは無理でしょうね。そんなに恐がりでもない私でも、背筋がゾワゾワする感じでした。
 すぐに管理責任だのなんだのという日本なら確実に立入り禁止にするところでしょうが、自己責任で見に行けます。


 洞穴の中には大きな黄色い象の壁画。写真に写っている人もこの日はじめてンゴマクリラの丘に来たというジンバブエ人で、丘の頂上から一緒にここまで降りてみました。彼は手荷物を持って急勾配を降りるのは怖いと言って、一度途中で引き返して丘の上に荷物を置いてから降りてきました。


 丘の頂上からの眺め。この日はちょっと霞んでいて見通しはそんなに良くなかったですけど、それでも絶景です。写真では伝わらないスケールですね。
 今でもこの丘は聖なる場所と看做されているとかで、この日もお祈りに来ている人を数人見かけました。静かな谷で「God and Jesus! Open my spritual mind!」とか朗唱していて、土着宗教ではなくキリスト教なんですけどね。
 で、そこからそう遠くないところで白人ジンバブエ人がバーベキューパーティやってたりもする。


明日はきっと筋肉痛。